1. なぜ材料選定が重要なのか?
機械設計において「材料選定」は、単なる素材の選び方ではありません。
それは、製品の性能・寿命・安全性・コスト・加工性・環境対応など、すべてに関わる「設計の根幹」です。
例えば、軽量化が求められるドローンにステンレスを使えば飛行時間が短くなり、逆に高温・高圧環境でアルミを使えば破損のリスクが高まります。
つまり、材料の選定ミスは設計ミスに直結するのです。
2. アルミニウムの特性と使いどころ
🔹 基本物性:
- 密度:2.7 g/cm³(鉄の約1/3)
- 引張強度:100〜600 MPa(合金による)
- 熱伝導率:高い(約200 W/mK)
- 耐食性:自然酸化皮膜により良好
🔹 主な合金種類:
- A5052:耐食性・成形性に優れ、板金加工に最適
- A6061:強度と溶接性のバランスが良く、構造材に多用
- A7075:高強度アルミ、航空機部品に使用
🔹 適した用途:
- 軽量化が重要な製品(ドローン、EV車、ロボットアーム)
- 熱放散が必要な部品(ヒートシンク、筐体)
- 屋外使用だが腐食に弱い環境(看板、外装)
🔹 注意点:
- 高温環境(100℃以上)では強度が低下
- 表面硬度が低く、摩耗しやすい
- 溶接時に割れやすい合金もある(特にA7075)
3. ステンレス鋼の特性と使いどころ
🔹 基本物性:
- 密度:7.9 g/cm³(重い)
- 引張強度:400〜1000 MPa(種類による)
- 耐食性:クロム含有により非常に高い
- 耐熱性:高温環境でも安定(800℃以上)
🔹 主な種類:
- SUS304:最も一般的。耐食性・加工性に優れる
- SUS316:モリブデン含有で耐塩性が高く、海洋環境に適する
- SUS430:磁性あり。コスト重視の用途に使われる
🔹 適した用途:
- 高温・高圧環境(ボイラー、配管、熱交換器)
- 食品・医療分野(衛生性が求められる機器)
- 屋外構造材(橋梁、建築外装)
🔹 注意点:
- 重量があるため、可動部には不向き
- 加工が難しく、切削工具の摩耗が早い
- コストが高く、量産品には不利な場合も
4. 実務での選定基準:どう選ぶべきか?
✅ 1. 使用環境
条件 | 推奨材料 |
---|---|
高温・高圧 | ステンレス(SUS316など) |
屋外・腐食性環境 | アルミ(A5052)またはステンレス |
海水・塩害地域 | SUS316(耐塩性) |
✅ 2. 機能要求
要求 | 推奨材料 |
---|---|
軽量化 | アルミ(A6061, A7075) |
高強度 | ステンレス(SUS304, SUS630) |
熱伝導 | アルミ(ヒートシンク用途) |
✅ 3. 加工方法
加工 | 備考 |
---|---|
切削加工 | アルミは工具寿命が長く、加工性良好 |
溶接 | SUS304は溶接性良好、A7075は不向き |
表面処理 | アルミはアルマイト処理が可能、ステンレスは鏡面仕上げなど |
5. 適材適所の考え方とは?
「適材適所」とは、材料の特性を理解し、用途に応じて最適な素材を選ぶ設計思想です。
単に「強い材料」や「安い材料」を選ぶのではなく、以下のようなバランス感覚が求められます。
- 強度 vs 重量
- 耐食性 vs コスト
- 加工性 vs 精度
- 外観 vs 機能性
例えば、屋外の看板フレームには「A6061アルミ」が適していますが、海辺の橋梁には「SUS316ステンレス」が必要です。
このように、設計者は材料の「性格」を理解し、最適な「役割」を与えることが重要です。
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