機械設計の基礎知識④:材料選定の基本|アルミかステンレスか、適材適所の考え方

ニュース 9月 5, 2025

1. なぜ材料選定が重要なのか?

機械設計において「材料選定」は、単なる素材の選び方ではありません。
それは、製品の性能・寿命・安全性・コスト・加工性・環境対応など、すべてに関わる「設計の根幹」です。

例えば、軽量化が求められるドローンにステンレスを使えば飛行時間が短くなり、逆に高温・高圧環境でアルミを使えば破損のリスクが高まります。
つまり、材料の選定ミスは設計ミスに直結するのです。

なぜ材料選定が重要なのか


2. アルミニウムの特性と使いどころ

🔹 基本物性:

  • 密度:2.7 g/cm³(鉄の約1/3)
  • 引張強度:100〜600 MPa(合金による)
  • 熱伝導率:高い(約200 W/mK)
  • 耐食性:自然酸化皮膜により良好

🔹 主な合金種類:

  • A5052:耐食性・成形性に優れ、板金加工に最適
  • A6061:強度と溶接性のバランスが良く、構造材に多用
  • A7075:高強度アルミ、航空機部品に使用

🔹 適した用途:

  • 軽量化が重要な製品(ドローン、EV車、ロボットアーム)
  • 熱放散が必要な部品(ヒートシンク、筐体)
  • 屋外使用だが腐食に弱い環境(看板、外装)

🔹 注意点:

  • 高温環境(100℃以上)では強度が低下
  • 表面硬度が低く、摩耗しやすい
  • 溶接時に割れやすい合金もある(特にA7075)

3. ステンレス鋼の特性と使いどころ

🔹 基本物性:

  • 密度:7.9 g/cm³(重い)
  • 引張強度:400〜1000 MPa(種類による)
  • 耐食性:クロム含有により非常に高い
  • 耐熱性:高温環境でも安定(800℃以上)

🔹 主な種類:

  • SUS304:最も一般的。耐食性・加工性に優れる
  • SUS316:モリブデン含有で耐塩性が高く、海洋環境に適する
  • SUS430:磁性あり。コスト重視の用途に使われる

🔹 適した用途:

  • 高温・高圧環境(ボイラー、配管、熱交換器)
  • 食品・医療分野(衛生性が求められる機器)
  • 屋外構造材(橋梁、建築外装)

🔹 注意点:

  • 重量があるため、可動部には不向き
  • 加工が難しく、切削工具の摩耗が早い
  • コストが高く、量産品には不利な場合も

4. 実務での選定基準:どう選ぶべきか?

✅ 1. 使用環境

条件 推奨材料
高温・高圧 ステンレス(SUS316など)
屋外・腐食性環境 アルミ(A5052)またはステンレス
海水・塩害地域 SUS316(耐塩性)

✅ 2. 機能要求

要求 推奨材料
軽量化 アルミ(A6061, A7075)
高強度 ステンレス(SUS304, SUS630)
熱伝導 アルミ(ヒートシンク用途)

✅ 3. 加工方法

加工 備考
切削加工 アルミは工具寿命が長く、加工性良好
溶接 SUS304は溶接性良好、A7075は不向き
表面処理 アルミはアルマイト処理が可能、ステンレスは鏡面仕上げなど

5. 適材適所の考え方とは?

「適材適所」とは、材料の特性を理解し、用途に応じて最適な素材を選ぶ設計思想です。
単に「強い材料」や「安い材料」を選ぶのではなく、以下のようなバランス感覚が求められます。

  • 強度 vs 重量
  • 耐食性 vs コスト
  • 加工性 vs 精度
  • 外観 vs 機能性

例えば、屋外の看板フレームには「A6061アルミ」が適していますが、海辺の橋梁には「SUS316ステンレス」が必要です。
このように、設計者は材料の「性格」を理解し、最適な「役割」を与えることが重要です。


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