機械設計の基礎知識|公差とは|はめあいとは|JIS・ISOに基づく設計の基本

ニュース 9月 5, 2025

機械部品の設計図を見ると、必ず「寸法」が記載されています。しかし、実際の加工では誤差が避けられません。
そのため設計図には、部品が機能を損なわずに許容できる誤差範囲=公差(こうさ)を明示する必要があります。さらに、軸と穴などの組み合わせでは「どれくらいのすき間」や「締まり具合」が必要かを定義するはめあいが重要です。

この記事では、公差とは何か、はめあいとは何かをJISISO規格に基づいて解説します。

機械設計の基礎知識⑤:公差とは?はめあいとは?JIS・ISOに基づく設計の基本

1. 公差とは?|寸法の許容範囲

公差の定義

公差(Tolerance)とは、設計値からどの程度の誤差が許容されるかを示す範囲のことです。
例:設計寸法が「φ10.00 mm」、公差が「±0.05 mm」の場合、実際の部品寸法が「φ9.95 mm〜φ10.05 mm」であれば問題ありません。

公差が必要な理由

  • 加工には必ず誤差が生じるため

  • 組立や動作に支障がないようにするため

  • 品質管理や検査基準を明確にするため

公差の種類

  • 寸法公差:長さや直径など寸法の許容範囲

  • 幾何公差:形状や位置の精度(例:真円度、平行度)

  • 表面粗さ:表面の滑らかさ(Ra値などで規定)

2. はめあいとは?|軸と穴の関係性

はめあいの定義

はめあい(Fit)とは、軸と穴を組み合わせたときに生じる「すき間」や「締まり具合」を示します。
JIS(日本工業規格)やISO規格では、軸と穴の寸法公差を組み合わせて分類しています。

主なはめあいの種類

種類 特徴 用途例
すきまばめ 軸が穴より小さい → すき間あり ベアリングなど回転部品
中間ばめ 軸と穴の寸法がほぼ同じ 位置決め、軽い圧入
しまりばめ 軸が穴より大きい → 圧入される 歯車やプーリーなど固定部品

JIS方式の表記例

  • 穴:H7 → 基準穴、公差範囲はゼロからプラス側

  • 軸:g6 → 穴より小さくなる(すきまばめ)

  • 組合せ:H7/g6 → 軸が穴より小さく回転可能なすきまばめ

3. 実務におけるはめあいの選び方

動作種類に応じた選定

  • 回転する部品 → すきまばめ(H7/g6 など)

  • 固定が必要 → しまりばめ(H7/p6 など)

  • 位置決め → 中間ばめ(H7/k6 など)

コストと加工精度のバランス

  • 公差が厳しいほどコストは上昇

  • 必要以上に厳しい公差は避け、設計を最適化する

活用すべき標準規格

  • JIS B 0401(寸法公差)

  • JIS B 0621(はめあいの種類)

  • ISO 286(国際規格)

4. 公差・はめあいの設計例

例1:回転軸の設計

  • 設計寸法:φ20 mm

  • 穴:H7(20.000〜20.021 mm)

  • 軸:g6(19.979〜19.993 mm)
    → スムーズに回転可能

例2:圧入固定の設計

  • 設計寸法:φ30 mm

  • 穴:H7(30.000〜30.021 mm)

  • 軸:p6(30.027〜30.042 mm)
    → 圧入により強固に固定

5. まとめ:最適な公差・はめあい設計の重要性

公差やはめあいは、単なる数値指定ではなく、製品の品質・機能・コストに直結する重要な設計要素です。

  • 公差設定により加工の難易度とコストが変化する

  • はめあいの選定により、部品の動作特性や耐久性が左右される

JISやISOの標準規格を活用し、目的に応じて最適な組み合わせを選択することが、設計者に求められるスキルです。

設計に関するご相談は「IDEA」へ。公差やはめあいの最適化を通じて、品質とコストのバランスを実現します。

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弊社はベトナムにある機械設計請負・精密機械加工・自動化機械設備製作・ロボット/無人搬送車(AGV)研究開発・貿易の4つ事業をしている会社です。ベトナム国内の子会社は2社、日本と米国に各1社子会社を展開しています。

「迅速な対応・安価で高品質」をモットーにしています。従業員は250名で合弁企業含め420名、15年以上にわたりお客様に満足して頂く為に、品質、サービスを常に改善していく努力をする事でお客様からの高い評価を頂いております。今後は更なる展望として「お客様により貢献できる機械設計・加工・製造会社となり、また、ベトナムの産業の発展に貢献する」ことを目指していきます。

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