1. はじめに:寸法だけでは設計できない理由
機械部品の設計図を見ると、必ず「寸法」が記載されています。しかし、実際の加工では誤差が避けられません。
そのため設計図には、部品が機能を損なわずに許容できる誤差範囲=公差(こうさ)を明示する必要があります。さらに、軸と穴などの組み合わせでは「どれくらいのすき間」や「締まり具合」が必要かを定義するはめあいが重要です。
この記事では、公差とは何か、はめあいとは何かをJIS・ISO規格に基づいて解説します。
2. 公差とは?|寸法の許容範囲
公差の定義
公差(Tolerance)とは、設計値からどの程度の誤差が許容されるかを示す範囲のことです。
例:設計寸法が「φ10.00 mm」、公差が「±0.05 mm」の場合、実際の部品寸法が「φ9.95 mm〜φ10.05 mm」であれば問題ありません。
公差が必要な理由
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加工には必ず誤差が生じるため
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組立や動作に支障がないようにするため
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品質管理や検査基準を明確にするため
公差の種類
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寸法公差:長さや直径など寸法の許容範囲
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幾何公差:形状や位置の精度(例:真円度、平行度)
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表面粗さ:表面の滑らかさ(Ra値などで規定)
3. はめあいとは?|軸と穴の関係性
はめあいの定義
はめあい(Fit)とは、軸と穴を組み合わせたときに生じる「すき間」や「締まり具合」を示します。
JIS(日本工業規格)やISO規格では、軸と穴の寸法公差を組み合わせて分類しています。
主なはめあいの種類
種類 | 特徴 | 用途例 |
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すきまばめ | 軸が穴より小さい → すき間あり | ベアリングなど回転部品 |
中間ばめ | 軸と穴の寸法がほぼ同じ | 位置決め、軽い圧入 |
しまりばめ | 軸が穴より大きい → 圧入される | 歯車やプーリーなど固定部品 |
JIS方式の表記例
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穴:H7 → 基準穴、公差範囲はゼロからプラス側
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軸:g6 → 穴より小さくなる(すきまばめ)
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組合せ:H7/g6 → 軸が穴より小さく回転可能なすきまばめ
4. 実務におけるはめあいの選び方
動作種類に応じた選定
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回転する部品 → すきまばめ(H7/g6 など)
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固定が必要 → しまりばめ(H7/p6 など)
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位置決め → 中間ばめ(H7/k6 など)
コストと加工精度のバランス
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公差が厳しいほどコストは上昇
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必要以上に厳しい公差は避け、設計を最適化する
活用すべき標準規格
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JIS B 0401(寸法公差)
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JIS B 0621(はめあいの種類)
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ISO 286(国際規格)
5. 公差・はめあいの設計例
例1:回転軸の設計
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設計寸法:φ20 mm
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穴:H7(20.000〜20.021 mm)
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軸:g6(19.979〜19.993 mm)
→ スムーズに回転可能
例2:圧入固定の設計
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設計寸法:φ30 mm
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穴:H7(30.000〜30.021 mm)
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軸:p6(30.027〜30.042 mm)
→ 圧入により強固に固定
6. まとめ:最適な公差・はめあい設計の重要性
公差やはめあいは、単なる数値指定ではなく、製品の品質・機能・コストに直結する重要な設計要素です。
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公差設定により加工の難易度とコストが変化する
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はめあいの選定により、部品の動作特性や耐久性が左右される
JISやISOの標準規格を活用し、目的に応じて最適な組み合わせを選択することが、設計者に求められるスキルです。
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