機械設計の基礎知識|動力伝達機構の種類と使い分け|ギア・カム・ベルト・ネジの選定基準

ニュース 9月 5, 2025

機械設計において、動力伝達機構の選定は製品の性能、耐久性、コストに大きく影響します。この記事では、代表的な4つの伝達機構「ギア(歯車)」「カム」「ベルト」「ネジ」について、それぞれの特徴、メリット・デメリット、選定基準を初心者にも分かりやすく解説します。

動力伝達機構の種類と使い分け

1. 動力伝達とは?

動力伝達とは、モーターやエンジンなどの動力源から、機械の各部に力や動きを伝える仕組みのことです。適切な伝達機構を選ぶことで、効率的で安定した動作が可能になります。

2. ギア(歯車)|高精度で強力な伝達

特徴

歯車同士が噛み合うことで回転力(トルク)を伝達します。直歯、斜歯、ベベルギア、遊星歯車など種類が豊富です。

メリット

  • 高効率(最大98%)
  • 滑りがなく、正確な伝達が可能
  • 大きな力の伝達に適している

デメリット

  • 加工精度が必要でコストが高い
  • 潤滑が不十分だと騒音が発生
  • 長距離伝達には不向き

主な用途

  • 自動車のギアボックス
  • 産業用ロボット
  • 工作機械

選定ポイント

  • 必要なトルクと回転速度
  • 設置スペースとコスト
  • 精度と耐久性

3. カム|複雑な動きを実現

特徴

回転運動を直線運動や往復運動に変換する機構。カムの形状によって動きが決まります。

メリット

  • 非線形で複雑な動作が可能
  • 動作パターンを自由に設計できる

デメリット

  • 加工が難しく、精度が求められる
  • 摩耗しやすく、定期的なメンテナンスが必要

主な用途

  • ミシン
  • 内燃機関のバルブ制御
  • 包装機械

選定ポイント

  • 必要な動作形状
  • 使用頻度と耐久性
  • 材質と加工方法

4. ベルト|柔軟で低コストな伝達

特徴

プーリー(滑車)間をベルトで接続し、回転力を伝える機構。Vベルト、タイミングベルト、フラットベルトなどがあります。

メリット

  • 静音性が高く、振動が少ない
  • 長距離伝達が可能
  • 交換が容易でコストが低い

デメリット

  • 滑りやすく、効率が低下することがある
  • 高トルクには不向き
  • 定期的な張り調整が必要

主な用途

  • 家電製品(洗濯機、掃除機)
  • コンベアシステム
  • 換気ファン

選定ポイント

  • 軸間距離
  • 回転速度と負荷
  • ベルトの種類と材質

5. ネジ|精密な直線運動を実現

特徴

回転運動を直線運動に変換する機構。送りネジ、ボールねじ、台形ねじなどがあります。

メリット

  • 高精度な位置決めが可能
  • 自己保持性があり、逆転しにくい

デメリット

  • 伝達速度が遅い
  • 摩擦が大きく、効率が低い
  • 摩耗しやすい

主な用途

  • CNC工作機械
  • 医療機器
  • 昇降装置

選定ポイント

  • 精度要求
  • 荷重と速度
  • ネジの種類と材質

6. 比較表|各機構の特徴まとめ

機構 メリット デメリット 主な用途
ギア 高精度・高効率 高コスト・騒音 自動車、ロボット
カム 複雑な動作 加工難・摩耗 ミシン、エンジン
ベルト 静音・低コスト 滑り・張り調整 家電、コンベア
ネジ 高精度・自己保持 低速・摩耗 CNC、医療機器

7. 選定のポイントまとめ

動力伝達機構を選ぶ際は、以下の点を総合的に判断しましょう:

  • 必要な動作(回転・直線・往復)
  • トルク・速度・精度
  • 設置スペースとコスト
  • メンテナンス性と耐久性

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弊社はベトナムにある機械設計請負・精密機械加工・自動化機械設備製作・ロボット/無人搬送車(AGV)研究開発・貿易の4つ事業をしている会社です。ベトナム国内の子会社は2社、日本と米国に各1社子会社を展開しています。

「迅速な対応・安価で高品質」をモットーにしています。従業員は250名で合弁企業含め420名、15年以上にわたりお客様に満足して頂く為に、品質、サービスを常に改善していく努力をする事でお客様からの高い評価を頂いております。今後は更なる展望として「お客様により貢献できる機械設計・加工・製造会社となり、また、ベトナムの産業の発展に貢献する」ことを目指していきます。

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