機械設計の基礎知識⑥:加工しやすい設計とは?|加工現場が喜ぶ図面の描き方

ニュース 9月 5, 2025

1. はじめに:加工性を考慮した設計の重要性

機械設計の基本は「図面通りに部品が作られること」です。しかし、設計段階で加工のしやすさ(加工性)を無視すると、製造現場でトラブルが発生したり、納期遅延・コスト増加につながります。

加工しやすい設計とは、加工方法・工具・材料の特性を理解し、無理なく・効率的に・高精度で製作できる設計のことです。これは単に設計者の知識だけでなく、加工現場との連携によって実現されます。

機械設計の基礎知識⑥:加工しやすい設計とは?|加工現場が喜ぶ図面の描き方
機械設計の基礎知識⑥:加工しやすい設計とは?|加工現場が喜ぶ図面の描き方

2. 加工しやすい設計の基本原則

2.1. 加工方法に合った形状を選ぶ

部品の形状は加工方法によって得意・不得意があります。

  • 旋盤加工:円筒形・軸物に最適

  • フライス加工:平面・角形状に適している

  • 穴あけ加工:基本は垂直方向の穴、斜め穴は高難度

  • 板金加工:曲げ半径や抜き形状に制約あり

👉 設計者は「この形状はどの加工方法で製作するのか?」を常に意識する必要があります。


2.2. 工具が入りやすい設計にする

工具が届かない形状は加工を難しくします。

  • 深すぎる溝や狭い隙間は避ける

  • 内部形状にはR(丸み)をつけ、工具寿命を延ばす

  • 直角の内角はエンドミルが折れやすい

👉 例:内角にR3〜R5程度の丸みをつけると、加工安定性が向上します。


2.3. 公差は必要最低限に

  • 厳しい公差(±0.01mmなど)は加工コストを急増させる

  • 実際に必要な精度を見極めることが重要

  • 過剰設計は避ける

👉 例:外装カバーに±0.01mmの公差は不要。±0.1mmで十分なケースが多い。


2.4. 材料の加工性を考慮する

材料選定は加工コスト・納期に直結します。

材料 加工性 特徴
アルミ 軽く加工しやすい、コストも低い
ステンレス 硬く工具摩耗が早い
加工しやすいが錆びやすい
樹脂 切削性良好、ただし熱に弱い

👉 設計段階で「加工しやすい材料」を選ぶことで、納期短縮・コスト削減が可能。


2.5. 加工順序を意識する

加工工程を複雑にすると段取りや治具が増え、コストが上がります。

  • できるだけ「一方向から加工可能な形状」にする

  • 基準面を明確にし、そこから寸法を測れるよう配置する

👉 例:穴の位置を基準面から測れるようにすることで、加工精度が安定します。


3. 加工現場が困る設計例と改善案

設計ミス 問題点 改善案
深い溝+直角角 工具が折れやすい Rをつける/溝を浅くする
過剰な公差 加工コスト増加 必要最小限の公差にする
斜め穴 特殊治具が必要 垂直穴に変更/加工方法を明記
硬すぎる材料 工具摩耗・時間増 加工性の良い材料に変更

4. 加工しやすい図面の描き方

設計者は、加工者が迷わず製作できる図面を用意する必要があります。

図面に明記すべき情報:

  • 加工基準面(寸法の基準となる位置)

  • 公差の範囲(JIS・ISOに準拠)

  • 表面粗さ(Ra値など)

  • 材料の種類と処理方法(例:A6061-T6、アルマイト処理)

👉 「誰が見ても理解できる図面」が、品質と納期を守るカギです。


5. 設計者と加工者の連携が成功のカギ

  • 設計者は現場の制約を理解する

  • 加工者は設計意図を理解する

  • 双方がレビューを重ねることで「加工しやすい設計」が実現

👉 設計と製造の橋渡しをする姿勢が、品質・コスト・納期すべての改善につながります。


6. まとめ:加工性を考慮した設計で品質とコストを最適化

加工しやすい設計は、設計者と加工者の協力関係によって生まれます。

  • 加工方法に適した形状を選ぶ

  • 工具や公差の制約を考慮する

  • 材料選びや加工順序を工夫する

こうした配慮が「現場が喜ぶ設計」につながり、最終的に製品品質・コスト・納期の最適化を実現します。

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