1. はじめに:加工性を考慮した設計の重要性
機械設計の基本は「図面通りに部品が作られること」です。しかし、設計段階で加工のしやすさ(加工性)を無視すると、製造現場でトラブルが発生したり、納期遅延・コスト増加につながります。
加工しやすい設計とは、加工方法・工具・材料の特性を理解し、無理なく・効率的に・高精度で製作できる設計のことです。これは単に設計者の知識だけでなく、加工現場との連携によって実現されます。

2. 加工しやすい設計の基本原則
2.1. 加工方法に合った形状を選ぶ
部品の形状は加工方法によって得意・不得意があります。
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旋盤加工:円筒形・軸物に最適
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フライス加工:平面・角形状に適している
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穴あけ加工:基本は垂直方向の穴、斜め穴は高難度
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板金加工:曲げ半径や抜き形状に制約あり
👉 設計者は「この形状はどの加工方法で製作するのか?」を常に意識する必要があります。
2.2. 工具が入りやすい設計にする
工具が届かない形状は加工を難しくします。
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深すぎる溝や狭い隙間は避ける
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内部形状にはR(丸み)をつけ、工具寿命を延ばす
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直角の内角はエンドミルが折れやすい
👉 例:内角にR3〜R5程度の丸みをつけると、加工安定性が向上します。
2.3. 公差は必要最低限に
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厳しい公差(±0.01mmなど)は加工コストを急増させる
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実際に必要な精度を見極めることが重要
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過剰設計は避ける
👉 例:外装カバーに±0.01mmの公差は不要。±0.1mmで十分なケースが多い。
2.4. 材料の加工性を考慮する
材料選定は加工コスト・納期に直結します。
材料 | 加工性 | 特徴 |
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アルミ | ◎ | 軽く加工しやすい、コストも低い |
ステンレス | △ | 硬く工具摩耗が早い |
鉄 | ○ | 加工しやすいが錆びやすい |
樹脂 | ◎ | 切削性良好、ただし熱に弱い |
👉 設計段階で「加工しやすい材料」を選ぶことで、納期短縮・コスト削減が可能。
2.5. 加工順序を意識する
加工工程を複雑にすると段取りや治具が増え、コストが上がります。
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できるだけ「一方向から加工可能な形状」にする
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基準面を明確にし、そこから寸法を測れるよう配置する
👉 例:穴の位置を基準面から測れるようにすることで、加工精度が安定します。
3. 加工現場が困る設計例と改善案
設計ミス | 問題点 | 改善案 |
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深い溝+直角角 | 工具が折れやすい | Rをつける/溝を浅くする |
過剰な公差 | 加工コスト増加 | 必要最小限の公差にする |
斜め穴 | 特殊治具が必要 | 垂直穴に変更/加工方法を明記 |
硬すぎる材料 | 工具摩耗・時間増 | 加工性の良い材料に変更 |
4. 加工しやすい図面の描き方
設計者は、加工者が迷わず製作できる図面を用意する必要があります。
図面に明記すべき情報:
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加工基準面(寸法の基準となる位置)
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公差の範囲(JIS・ISOに準拠)
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表面粗さ(Ra値など)
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材料の種類と処理方法(例:A6061-T6、アルマイト処理)
👉 「誰が見ても理解できる図面」が、品質と納期を守るカギです。
5. 設計者と加工者の連携が成功のカギ
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設計者は現場の制約を理解する
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加工者は設計意図を理解する
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双方がレビューを重ねることで「加工しやすい設計」が実現
👉 設計と製造の橋渡しをする姿勢が、品質・コスト・納期すべての改善につながります。
6. まとめ:加工性を考慮した設計で品質とコストを最適化
加工しやすい設計は、設計者と加工者の協力関係によって生まれます。
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加工方法に適した形状を選ぶ
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工具や公差の制約を考慮する
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材料選びや加工順序を工夫する
こうした配慮が「現場が喜ぶ設計」につながり、最終的に製品品質・コスト・納期の最適化を実現します。
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