JIS製図規格|JISとISO規格の違い

ニュース 9月 24, 2025

機械設計において図面は、設計者の意図を正確に製造現場へ伝えるための「共通言語」です。しかし、国や地域によって採用されている規格が異なると、読み取りの誤解や加工ミスが発生する可能性があります。

日本では JIS規格(Japanese Industrial Standards:日本工業規格) が広く利用され、世界的には ISO規格(International Organization for Standardization:国際標準化機構規格) が標準として用いられています。両者には多くの共通点がありますが、図面作成においては重要な違いが存在します。

本記事では、JISとISOの機械製図における違いを詳しく解説します。

JISとISO規格の違い
JISとISO規格の違い

1. 投影法の違い

投影法は図面を理解するうえで最も基本的な要素です。

  • JIS規格: 第一角法(First Angle Projection)を基本としつつ、第三角法(Third Angle Projection)も認められています。

  • ISO規格: 原則として第一角法のみを採用しています。

日本国内の図面では第一角法が多い一方、アメリカでは第三角法が一般的です。そのため、JISでは投影法の記号を図面上に必ず記載することが推奨されています。

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製図の投影法

2. 用紙サイズの違い

用紙サイズも両規格で異なります。

  • JIS規格: A系列(A0, A1, A2, A3, A4)に加えて、B系列(B0, B1, B2…)も採用。特にB系列は日本特有で製造業に根強く使われています。

  • ISO規格: A系列のみを標準としています。

海外企業とのやり取りでは、JIS独自のB系列が不便となるため、国際的な案件ではA系列を使用するのが一般的です。

3. 線の種類と太さ

図面における線の表現は、形状や意味を伝える上で不可欠です。

  • JIS規格: 線種の種類に加え、太さ(例:0.18, 0.25, 0.35, 0.5 mm…)まで詳細に規定。太線と細線の比率も明確に定められています。

  • ISO規格: 線種や太さの定義はあるものの、国際的な統一を重視しており、JISほど細かい規定はありません。

4. 文字と記号

図面上の文字や記号も規格によって異なります。

  • JIS規格: 日本語環境に対応しており、文字の高さは2.5mm~10mmまで規定。縦書き・横書きにも配慮されています。

  • ISO規格: ラテン文字を基準とし、英語を前提に設計。

JISでは日本語注記の読みやすさを重視する一方、ISOは国際的な理解を優先しています。

JIS製図規格|JISとISO規格の違い
日本語注記の読みやすさ

5. 寸法記入の違い

寸法の記載方法も両規格で若干異なります。

  • JIS規格: 寸法線と補助線の位置、矢印の形状、文字の配置などを細かく規定。単位はmmが基本で、必要に応じて明記します。

  • ISO規格: 基本原則は共通ですが、公差の記号や単位表記に違いが見られます。

 例えば、寸法数字の位置や矢印の形状が異なる場合、国際取引では混乱を招く可能性があります。

6. 断面図と省略のルール

断面図は内部構造を理解するために必要ですが、規格によって取り扱いに差があります。

  • JIS規格: 軸、補強リブ、ボルト、ナットなどは原則として断面表示しないと明示。

  • ISO規格: 同様の考え方だが、表現方法に違いがある。

特に自動車部品など複雑な図面では、このルールを理解していないと誤解を生む可能性があります。

7. 公差と表面粗さ

精密加工において重要な公差や表面粗さの表記も異なります。

  • JIS規格: △マーク、Ra、Rzなど詳細な規定が豊富。

  • ISO規格: 基本的には同じ記号を使用するが、書き方や基準が微妙に異なる。

 同じRa値でも、規格が違えば解釈が異なる場合があるため注意が必要です。

8. JISとISOの比較まとめ

項目 JIS規格 ISO規格
投影法 第一角法中心、第三角法も可 第一角法が原則
用紙サイズ A系列+B系列 A系列のみ
線の種類 太さや比率まで細かく規定 国際標準に準拠、シンプル
文字 日本語対応、詳細規定あり 英語前提、ラテン文字中心
寸法記入 詳細に規定、mm単位が基本 原則共通だが記号に違い
断面図 一部部品を断面不可と規定 同様だが表記差あり
公差・粗さ JIS独自の詳細規定 国際統一規格

結論

JISとISOはどちらも「設計意図を正しく伝える」ための規格ですが、細部には多くの違いがあります。設計者に求められるのは以下のポイントです。

  • 国内案件ではJIS規格を理解し正しく適用すること

  • 国際案件ではISO規格を前提に対応できる柔軟性

  • 投影法、寸法、公差などの違いを把握して誤解を防ぐこと

特に日本国内ではJIS規格が主流であり、その詳細を理解することが高品質な図面作成につながります。

JIS規格に基づいた図面作成の具体的なルール(用紙サイズ、寸法記入、線種、文字、公差など)については、こちらの記事で詳しく解説しています。
機械設計の基礎知識|JIS規格に基づく図面の作成基準 – Idea Group

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