JIS製図規格|幾何公差・はめ合い公差・表面粗さの記入ルール

ニュース 9月 25, 2025

機械製図では、寸法だけでなく「精度」に関する情報を正しく伝えることが不可欠です。部品の機能や互換性、加工品質を保証するためには、幾何公差・はめ合い公差・表面粗さの記入が必要であり、JIS(日本産業規格)ではそれぞれに明確なルールが定められています。

本記事では、JIS規格に基づく幾何公差・はめ合い公差・表面粗さの意味と記入方法、ISOとの違い、そして実務での注意点について詳しく解説します。

公差

1. 幾何公差とは何か?

幾何公差(Geometric Tolerance)は、部品の形状・位置・姿勢に関する許容範囲を示すもので、寸法だけでは表現できない「形の精度」を定義します。

主な幾何公差の種類

公差の種類 意味 記号
真直度 線がまっすぐであること
平面度 面が平らであること
円筒度 円柱が均一であること
同心度 軸が中心に揃っていること
位置度 穴や形状の位置精度
傾斜度 指定角度に対する傾き

記入方法(JIS B 0021準拠)

  • 公差枠(長方形)内に記号・数値・基準を記載
  • 対象形状の寸法線付近に配置
  • 基準面には「基準記号(A、B、Cなど)」を付ける

2. はめ合い公差とは何か?

はめ合い公差(Fit Tolerance)は、軸と穴などの組み合わせにおける寸法の許容差を定義するもので、部品の嵌合状態(すきま・圧入など)を制御します。

公差の表記方法(JIS B 0401準拠)

  • 基本寸法の後に「公差記号」を付ける(例:φ20 H7/g6)
  • 軸側:小文字(例:g6)、穴側:大文字(例:H7)
  • 数値はJIS表に基づき、等級(IT)で精度を管理

はめ合いの種類と代表記号

はめ合いの種類 特徴 代表記号 用途例
すきまばめ 軸が穴より小さい H7/g6, H7/h6 回転軸、スライド部品
中間ばめ 軸と穴がほぼ同寸 H7/k6 精密嵌合、位置決め
しまりばめ 軸が穴より大きい H7/p6, H7/s6 圧入、固定部品
例えば「φ20 H7/g6」という記号は、穴側がH7(標準公差)、軸側がg6(ややきつめのすきまばめ)を意味し、回転軸などに適しています。

3. 表面粗さとは何か?

表面粗さ(Surface Roughness)は、加工面の滑らかさを数値で示すもので、摩擦・耐久性・密着性などに影響します。

表記方法(JIS B 0601準拠)

  • 記号「┴」または「⌯」を使用
  • 数値は「Ra(算術平均粗さ)」で表記(例:Ra 3.2)
  • 必要に応じて加工方法(研削・切削など)を併記

表面粗さの目安

Ra値(μm) 加工方法 用途例
0.2〜0.8 研削・ラップ 精密部品、軸受
1.6〜3.2 切削 一般機械部品
6.3〜12.5 鋳造・鍛造 粗加工部品、外観不要部位

4. JISとISOの違い(公差・粗さ)

JISとISOは基本的に整合していますが、表記方法や記号に若干の違いがあります。

項目 JIS ISO
幾何公差 JIS B 0021 ISO 1101
はめ合い公差 JIS B 0401 ISO 286
表面粗さ JIS B 0601 ISO 1302
記号の配置 寸法線付近 同様だが柔軟性あり

海外との図面交換では、ISO準拠の記号や表記に変換する必要があるため、CAD設定や凡例の明示が重要です。

5. 実務での注意点とチェックリスト

  • 幾何公差は「機能に必要な最小限」にとどめる
  • はめ合い公差は「加工方法とコスト」を考慮して選定
  • 表面粗さは「性能要求」と「加工能力」のバランスを取る
  • 公差記号は図面凡例や注記で統一し、誤解を防ぐ
  • CADテンプレートや社内ルールを整備して品質を安定化

公差等級(IT等級)の選定は、加工コストと品質のバランスを取る上で非常に重要です。必要以上に厳しい公差を設定すると、加工難易度が上がり、コストが増加する可能性があります。

結論

幾何公差・はめ合い公差・表面粗さは、機械製図における「精度の言語」であり、設計品質と製造効率を左右する重要な要素です。JIS規格に基づいた正しい記入と使い分けを理解することで、部品の機能保証とトラブル防止が可能になります。

IDEA Groupでは、JIS規格に準拠した製図ルールを徹底し、公差管理と表面品質の標準化を支援しています。図面の精度向上や設計業務の効率化に関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
関連記事:機械設計の基礎知識|JIS規格に基づく図面の作成基準 – Idea Group

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弊社はベトナムにある機械設計請負・精密機械加工・自動化機械設備製作・ロボット/無人搬送車(AGV)研究開発・貿易の4つ事業をしている会社です。ベトナム国内の子会社は2社、日本と米国に各1社子会社を展開しています。

「迅速な対応・安価で高品質」をモットーにしています。従業員は250名で合弁企業含め420名、15年以上にわたりお客様に満足して頂く為に、品質、サービスを常に改善していく努力をする事でお客様からの高い評価を頂いております。今後は更なる展望として「お客様により貢献できる機械設計・加工・製造会社となり、また、ベトナムの産業の発展に貢献する」ことを目指していきます。

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