断面図（だんめんず）は、部品の内部構造や形状を明確に表現するための重要な図示方法です。外形だけでは伝えきれない情報を可視化することで、加工・検査・組立の精度を高めることができます。JIS（日本産業規格）では、断面図の描き方や切断のルールが細かく定義されており、図面の統一性と信頼性を確保するために不可欠です。
本記事では、JIS規格に基づく断面図の種類、切断方法、記号の使い方、そして実務での注意点について詳しく解説します。
1. 断面図とは何か？
断面図とは、部品を仮想的に切断し、その切断面を図面上に表現したものです。内部の形状や構造、穴の位置、溝の深さなどを明確に示すことができ、特に複雑な部品や中空構造では不可欠な図示方法です。
2. JIS規格における断面図の種類
JIS B 0001では、以下のような断面図の種類が定義されています。
| 種類 | 説明 | 用途例 |
|---|---|---|
| 全断面図 | 部品全体を切断して描く | 対称形状、複雑な内部構造 |
| 半断面図 | 片側のみ切断し、もう片側は外形を残す | 対称部品、視認性重視 |
| 部分断面図 | 特定領域のみ切断 | 小穴、溝、局所構造 |
| 回転断面図 | 円筒形状を回転させて断面表示 | シャフト、パイプなど |
| 断面図（離れ型） | 主投影図から離して配置 | 複雑形状の補足表示に有効 |
3. 切断の基本ルール（JIS準拠）
- 切断線は太い一点鎖線で描き、両端に矢印を付ける
- 矢印の方向が断面図の視点となる
- 切断線にはラテン文字（A、B、Cなど）を付けて識別
- 断面図にはハッチング（斜線）を施し、切断面を明示
- ハッチングの角度は原則45度、同一部品内では方向を統一
- ハッチング線は寸法線や文字と重ならないように配置
4. 切断してはいけない部品・領域
JISでは、以下のような部品や領域は原則として切断しないとされています：
| 部品・領域 | 理由 |
|---|---|
| ボルト・ナット・ワッシャー | 標準部品であり、断面図での表現が不要 |
| ベアリング・スナップリング | 内部構造が複雑で、断面図では誤解を招く可能性がある |
| 溶接部・接着部 | 切断すると構造が不明瞭になる場合がある |
| 表面処理層 | 厚みが微細で、断面図では表現しにくい |
5. 実務での断面図活用ポイント
- 複雑な内部構造は断面図で明示し、隠れ線の多用を避ける
- 対称形状は半断面図で簡潔に表現する
- 小さな穴や溝は部分断面図で補足する
- ハッチングの方向・間隔は統一し、視認性を高める
- 切断線の記号（A-Aなど）は図面凡例に明記する
- 必要に応じて断面図を主投影図から離して配置することで、図面の整理性を向上
結論
断面図と切断規則は、機械製図における「内部構造の見える化」を実現するための重要な技法です。JIS規格に準拠した描き方と判断基準を理解することで、図面の精度と読みやすさが大きく向上します。
IDEA Groupでは、JIS製図の標準化支援を通じて、断面図の品質向上と設計業務の効率化をサポートしています。図面の見直しや切断ルールに関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
