機械設計において、図面は設計意図を正確に伝えるための最も重要なツールです。その際に欠かせないのが 用紙サイズ と 縮尺(スケール) の選択です。適切に選ばなければ、図面が読みにくくなり、誤解や製造エラーの原因となります。
本記事では、JIS規格に基づく用紙サイズと縮尺について詳しく解説し、実際の設計現場での使い分け方を紹介します。
1. JIS規格における用紙サイズ
JIS規格では A系列 と B系列 の2種類の用紙体系が規定されています。
(1) A系列
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A0, A1, A2, A3, A4 が標準。
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A0(841×1189 mm) は大判図やレイアウト図に使用。
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A3, A4 は現場や教育で最も一般的。コピー・保存もしやすい。
(2) B系列
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B0, B1, B2, B3, B4 などがあり、日本で特有に利用されている。
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特に B1, B2 は工場図面や大判図で多用。
ISO規格ではA系列のみを採用。B系列は日本独自であり、海外との取引ではA系列を優先するのが実務的です。
2. 用紙サイズの仕組みと√2の関係
A系列の用紙は 縦横比が√2(約1.414) で設計されており、折ったり拡大・縮小しても比率が一定に保たれるのが特徴です。
例:
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A0を半分に折るとA1、さらに半分でA2…となる。
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A0をそのままA4までコピー縮小すると、常に相似形を維持できる。
この仕組みのおかげで、拡大縮小コピーに適しており、図面管理が効率化されます。
3. 縮尺(スケール)の基礎
縮尺とは、実物の寸法と図面上の寸法との比率を表すものです。JIS B 5530で以下が標準として規定されています。
(1) 縮小図
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1:2, 1:5, 1:10, 1:20, 1:50, 1:100 など。
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大型製品や建築物などを描くときに使用。
(2) 原寸図
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1:1。
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小型部品や精密部品で最も一般的。
(3) 拡大図
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2:1, 5:1, 10:1, 20:1 など。
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微細な加工部や小さな部品を強調する場合に使用。
4. 縮尺の書き方と表示位置
縮尺は通常、比率表記 または 分数表記 で表されます。
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比率形式:1:2, 2:1
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分数形式:1/2, 2/1
表示位置:
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図面の 表題欄(タイトルブロック) に記載するのが基本。
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必要に応じて図面右下や見やすい位置に追加表示する場合もあります。
5. 縮尺選択の注意点
縮尺を決める際には以下のポイントを考慮します。
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図面の見やすさ
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寸法が重ならず、誰でも読みやすい配置にする。
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必要な精度
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精密部品では拡大図を併用し、細部を明確化。
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製造現場での実用性
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作業者が直感的に理解できる縮尺を選ぶ。
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国際規格との整合性
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海外向けにはISO推奨の縮尺を優先。
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6. 縮尺が統一されない場合の対処
図面の一部に異なる縮尺を使用することもあります。例えば、全体図は1:10、詳細図は2:1など。
この場合は
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部分詳細図には必ず縮尺を明記する。
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誤解を避けるため、寸法は必ず数値で記入し、縮尺に依存しない。
これにより、縮尺の不一致があっても製造現場での誤解を防げます。
7. 検図における縮尺確認の重要性
図面をチェックする「検図」では、縮尺の誤りが重大な問題を引き起こします。
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縮尺が間違っていると、部品が正しく加工されない。
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設計意図が伝わらず、コスト増大や納期遅延につながる。
検図の段階で縮尺を必ず確認することは、品質保証に直結する重要な工程です。
8. JISとISOの違いまとめ(用紙・縮尺)
項目 | JIS規格 | ISO規格 |
---|---|---|
用紙サイズ | A系列+B系列 | A系列のみ |
縮尺 | 多様な比率(1:1, 1:2, 2:1など) | 基本は共通だがB系列の概念なし |
表示方法 | 比率形式・分数形式 | 主に比率形式 |
実務での特徴 | 日本企業ではB系列多用 | 国際取引ではA系列必須 |
結論
用紙サイズと縮尺は、機械製図の基本要素であり、正しい選択が図面品質を大きく左右します。
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JIS規格はA系列とB系列の両方を利用可能。
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ISO規格はA系列のみで国際的に統一。
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縮尺は設計の目的に応じて適切に選び、検図での確認を徹底する。
設計者に求められるのは「見やすさ」「精度」「実用性」「国際対応性」を考慮した判断力です。
➡ JIS規格全般の作図ルール(寸法記入、線種、文字、公差など)については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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