JIS製図規格|不要な部分の省略と投影図の簡略化ルール

ニュース 9月 25, 2025

機械製図では、設計者の意図を正確に伝えるために、図面上に必要な情報を過不足なく記載することが求められます。しかし、すべての形状や面を詳細に描くと、図面が煩雑になり、かえって読みづらくなることもあります。そこでJIS(日本産業規格)では、投影図の簡略化ルール に基づき、図面の簡略化や不要部分の省略に関するルールが定められており、効率的かつ明確な図面作成が可能になります。

本記事では、JIS規格に基づく不要部分の省略方法、簡略化の原則、投影図の扱い方、そして実務での注意点について詳しく解説します。

JIS製図規格|不要な部分の省略と投影図の簡略化ルール

1. なぜ省略が必要なのか?

図面の目的は「必要な情報を正確に伝えること」であり、「すべてを描くこと」ではありません。以下のような理由から、省略や簡略化が推奨されます:

  • 図面の視認性を高める
  • 読み手の理解を助ける
  • 作業効率を向上させる
  • 印刷や保管のコストを削減する

JIS B 0001では、図面の簡略化に関する原則が定義されており、設計者はこれに従って図面を構成する必要があります。

2. 省略できる代表的な要素

JIS規格では、以下のような要素は省略または簡略化が可能とされています:

対称形状の反対側

対称部品の場合、片側のみを描き、中心線で対称性を示すことで省略可能。

繰り返し形状(穴・溝など)

同じ形状が規則的に並ぶ場合、代表寸法と「○個」などの注記で表現。

見えない内部構造

断面図や補助投影図で明示することで、隠れ線の多用を避ける。

標準部品(ねじ・ワッシャーなど)

JIS規格に準拠した部品は、記号や略図で表現可能。

長尺物の中間部

シャフトやパイプなど、長さが重要でない部分は「切断記号」で省略。

3. 投影図の簡略化と省略ルール

JISでは、三面図(正面図・平面図・側面図)を基本としつつ、必要に応じて投影図の数を減らすことが認められています。

原則

  • 必要な形状・寸法・関係性が伝わる範囲で省略可能
  • 省略した面は、他の図で補足するか、注記で明示する
  • 誤解を招く省略は避ける(例:穴の位置が不明になるなど)

  • 単純な部品:正面図+寸法のみで十分
  • 対称形状:正面図+中心線で片側省略
  • 複雑形状:断面図や補助図を追加し、隠れ線を省略

4. 実務での簡略化の判断基準

簡略化は「省略しても問題ないか?」ではなく、「省略することで誤解が生じないか?」を基準に判断します。

判断ポイント

  • 加工者が寸法・形状を正しく理解できるか?
  • 検査者が基準を明確に把握できるか?
  • 組立者が部品の関係性を誤解しないか?
  • 図面の読み手が追加説明なしで理解できるか?

5. 省略に関するJISとISOの違い

JISとISOは簡略化の考え方において大きな違いはありませんが、表記方法や記号の使い方に若干の差があります。

項目 JIS ISO
対称形状の省略 中心線+注記 同様だが記号表現が異なる場合あり
標準部品の略図 JIS記号に準拠 ISO 128に準拠した略図あり
省略記号 JIS Z 8315で定義 ISO 5456で定義されるが柔軟性あり

海外との図面交換では、略図や省略記号の意味が異なる場合があるため、凡例や注記で明示することが重要です。

6. よくある省略ミスと対策

  • 対称形状の省略で寸法が片側しか記載されていない
  • 繰り返し穴の数が注記されておらず、加工者が誤解
  • 長尺物の中間省略で全長寸法が不明
  • 対策:省略する際は必ず補足寸法・注記・記号を併用する

結論

図面の省略と簡略化は、設計者の判断力が問われる重要な工程です。JIS規格では、視認性と正確性を両立するためのルールが整備されており、これを活用することで図面の品質と効率が大きく向上します。

IDEA Groupでは、JIS規格に準拠した図面作成を通じて、設計業務の標準化と製造現場との連携強化を支援しています。図面の簡略化や省略ルールに関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
関連記事:機械設計の基礎知識|JIS規格に基づく図面の作成基準 – Idea Group

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「迅速な対応・安価で高品質」をモットーにしています。従業員は250名で合弁企業含め420名、15年以上にわたりお客様に満足して頂く為に、品質、サービスを常に改善していく努力をする事でお客様からの高い評価を頂いております。今後は更なる展望として「お客様により貢献できる機械設計・加工・製造会社となり、また、ベトナムの産業の発展に貢献する」ことを目指していきます。

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