機械製図において、図面の内容だけでなく「図枠(ずわく)」と「表題欄(ひょうだいらん)」の構成は、情報の整理・伝達において非常に重要です。JIS(日本産業規格)では、図枠の寸法・配置・表題欄の項目などが細かく定義されており、図面の統一性と信頼性を高める役割を果たします。
本記事では、JIS規格に基づく図枠と表題欄の構成ルール、記入項目、ISOとの違い、そして実務での活用ポイントについて詳しく解説します。

1. 図枠とは何か?
図枠とは、図面の外周に設けられる枠線であり、図面の範囲を明確にし、表題欄や注記欄などの情報領域を整理する役割を持ちます。
図枠の基本構成(JIS B 0001準拠)
- 用紙サイズ(A0〜A4)に応じて標準寸法が設定されている
- 外枠:用紙端から10mm内側に配置
- 内枠:図面内容を収める領域。表題欄・注記欄を含む
- 左側または下側に「折り目線」や「ファイリングマージン」を設ける場合あり
2. 表題欄とは何か?
表題欄は、図面の右下隅に配置される情報欄であり、図面の識別・管理・履歴を記録するための領域です。JISでは、記入項目と配置順が定められており、誰が見ても同じように理解できる構成が求められます。
表題欄の主な記入項目
項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
図面番号 | 図面の一意識別番号 | 管理・検索に使用 |
品名 | 部品や製品の名称 | 製造・発注に必要 |
材質 | 使用材料 | 加工・調達に影響 |
数量 | 製作数 | 製造指示に必要 |
縮尺 | 図面のスケール | 例:1:1、1:2など |
作成者 | 図面を作成した担当者 | 責任の明確化 |
承認者 | チェック・承認者 | 品質保証に関与 |
日付 | 作成・改訂日 | 履歴管理に使用 |
投影法記号 | ⯈(第三角法)など | 規格準拠の明示 |
表題欄のサイズは、A4用紙では横幅180mm×高さ40mm程度が一般的です。A3以上では複数欄に分割されることもあります。
3. JISとISOの違い(図枠・表題欄)
JISとISOは図枠・表題欄の構成において基本的な考え方は共通していますが、細部に違いがあります。
項目 | JIS | ISO |
---|---|---|
表題欄の位置 | 右下隅に固定 | 同様だが柔軟性あり |
記入言語 | 日本語中心 | 英語中心(国際取引向け) |
投影法記号 | ⯈(第三角法)を明記 | ISO 5456でも同様に記載 |
図枠寸法 | JIS A系列に準拠 | ISO 216に準拠(互換性あり) |
海外との図面交換では、表題欄の言語や記号の意味が異なる場合があるため、凡例や注記で明示することが重要です。
4. 実務での図枠・表題欄の活用ポイント
- CADテンプレートに図枠・表題欄を標準化しておくと、作業効率が向上
- 表題欄の記入は設計者だけでなく、品質管理・製造部門とも連携して行う
- 改訂履歴欄を設けることで、図面変更のトレーサビリティが確保できる
- 投影法記号や縮尺の記載漏れは、誤解や加工ミスの原因になるため要注意
5. よくあるミスと対策
- 表題欄の項目が未記入 → 図面の識別が困難
- 投影法記号が省略 → 海外で第一角法と誤解される
- 改訂履歴が不明 → 古い図面で加工されるリスク
- 対策:テンプレート化+チェックリスト運用で記入漏れを防止
結論
図枠と表題欄は、図面の「顔」とも言える重要な構成要素です。JIS規格に準拠したレイアウトと記入ルールを守ることで、図面の信頼性・管理性・国際対応力が大きく向上します。
IDEA Groupでは、JIS製図の標準化支援を通じて、設計業務の効率化と品質向上をサポートしています。図面テンプレートの整備や表題欄の最適化に関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。