JIS製図規格|線の種類と使い方

ニュース 9月 24, 2025

機械製図において「線」は単なる形状を描くための道具ではありません。線はそれぞれ固有の意味を持ち、外形・内部構造・位置関係・加工基準 など、設計意図を正確に伝えるための重要な役割を果たします。

JIS規格では、線の種類や太さが厳密に規定されており、これを理解して正しく使い分けることが高品質な図面の前提条件となります。

本記事では、JIS規格における線の種類・太さ・配置ルールを詳しく解説し、実務での注意点も紹介します。

線の種類と使い方
線の種類と使い方

1. 線の役割と重要性

図面に描かれる線には、それぞれ以下の役割があります。

  • 外形の表現:部品の輪郭、可視部分を明示

  • 内部構造の伝達:隠れ線や断面線で見えない部分を補足

  • 基準・位置の明示:中心線、対称線、基準面を示す

  • 製造情報との連携:寸法線、矢印、記号と組み合わせて正しい指示を伝達

  • 視認性の確保:太さや種類を変えることで図面の可読性を高める

設計意図が正しく伝わるかどうかは、線の選び方にかかっていると言っても過言ではありません。

2. JIS規格における主要な線の種類

JIS B 0001に基づき、機械製図で使用する代表的な線種を整理します。初心者がまず覚えるべき線種は以下の通りです。

(1) 外形線(太実線)

  • 部品の見える部分の輪郭を示す。

  • 図面で最も基本的かつ重要な線。

(2) 隠れ線(細破線)

  • 現在の視点からは直接見えない内部の形状を表す。

  • 例:内部の穴や溝。

  • ただし、多用すると図面が煩雑になるため、断面図を用いることが推奨される。

(3) 中心線(細一点鎖線)

  • 円形の穴、円筒形状の中心軸を表す。

  • また、対象な図形の対称軸を示す。

  • 組立や加工で基準となるため、正確に配置する必要がある。

(4) 寸法線(細実線+矢印)

  • 寸法を記入するための線。

  • 両端に矢印をつけて寸法数値を示す。

(5) 補助線(細実線)

  • 形状から寸法線までを補助的に引き出す線。

  • 寸法線と混同しないようにすることが重要。

(6) 断面線(ハッチング線)

  • 断面図において切断された部分を斜線で表現。

  • 材質を区別する際にも使用される。

(7) 切断線(太一点鎖線+太矢印)

  • 断面図を作成する際に、どの位置で切断したかを示す。

  • 矢印の方向が観察方向を示す。

3. 線の太さと比率

線の太さは図面の可読性に直結します。JIS規格では以下が標準です。

  • 標準線幅:0.18 / 0.25 / 0.35 / 0.5 / 0.7 / 1.0 mm

  • 太線と細線の比率は2:1 を基本とする

例:太線0.5 mmの場合、細線は0.25 mmを選ぶ。

CADを使用する際も、線幅をJIS準拠に設定することが必須です。

4. 線の配置ルール

正しい図面作成のためには、線の配置方法にも注意が必要です。

  1. 寸法線と補助線は必ず細実線を使用する

  2. 寸法数値と線が重ならないように配置する

  3. 隠れ線は必要最小限に留め、煩雑さを避ける

  4. 中心線は物体より少し長く引き、視認性を確保する

  5. 切断線には矢印をつけ、観察方向を明示する

線の配置ルール
線の配置ルール

5. 実務での注意点

  • 隠れ線の多用に注意:視認性が低下するため、断面図で代替するのが望ましい。

  • 中心線の重要性:穴や軸の加工基準として必須。省略すると誤加工の原因になる。

  • 線の一貫性:図面全体で線幅・線種を統一しないと、設計の信頼性が損なわれる。

  • CAD環境:線種設定をJIS基準に合わせないと、印刷時に誤解を招く可能性がある。

6. JISとISOの違い

線の種類は基本的に共通していますが、規格上の違いがあります。

  • JIS:線幅や比率を細かく規定し、日本国内の製造現場での精度を重視。

  • ISO:国際的な整合性を優先し、簡潔で統一的な規定。

海外企業との共同開発では、ISOに合わせた調整が必要になることもあります。

7. JIS規格に基づく線の一覧(まとめ)

線の種類 用途 特徴
太実線 外形線、断面の輪郭 部品の見える部分を表す
細実線 寸法線、補助線、引出線 寸法や注記を補助
細破線 隠れ線 視点から見えない部分
細一点鎖線 中心線、対称線 穴・軸の中心、対称性を明示
太一点鎖線 基準面 特殊な基準面を強調
断面線 断面図 切断部をハッチングで表現
切断線 切断位置 観察方向を矢印で明示

結論

JIS規格における線は、種類ごとに明確な役割を持っています。

  • 外形線 は部品の形状を、隠れ線 は見えない構造を示す

  • 中心線 は加工基準となり、寸法線・補助線 は寸法伝達に不可欠

  • 断面線・切断線 により、内部構造を正確に理解できる

設計者に求められるのは、これらを正しく使い分け、誰が見ても理解できる図面を作成することです。

➡ JIS規格全般の作図ルールについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
機械設計の基礎知識|JIS規格に基づく図面の作成基準 – Idea Group

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