1. はじめに|機械製造業向け設計における電源と保護装置の重要性
機械製造業において、設備の信頼性と安全性は生産性に直結する重要な要素です。その中でも、制御盤や各種装置に電力を安定供給するためのスイッチング電源(AVR)や、万が一の異常時に機器を守る過電流保護装置は、設計段階でしっかりと考慮されるべき項目です。本記事では、機械製造業向け設計の現場で役立つ電源選定と保護装置に関する実践的な知見を紹介します。
2. スイッチング電源(AVR)選定の基本方針
スイッチング電源(AVR)は、機器に安定した電圧を供給するために不可欠な装置です。選定においては、以下の3点を基本方針とすることが推奨されます:
- 負荷率70%を目安に選定:余裕を持たせることで、発熱抑制・寿命延長が期待できます。
- 将来の拡張性も考慮:予備容量を確保しておくことで、機器追加にも柔軟に対応可能。
- 定格電圧・電流の確認:接続される機器の合計消費電流と突入電流を把握し、マージンを持った選定。

3. 主要機器の消費電流一覧と積算方法
設計時には、制御盤に接続される各機器のDC24V電源における消費電流を正確に把握する必要があります。以下は代表的な機器の一例です:
機器名 |
型式例 |
定格電流 |
GOT(タッチパネル) | GT1455-QTBD | 約320mA |
電磁ロック | D4NL-1DFA-B | 約200mA |
リレー | MY4N | 約36mA |
接触器 | SD-Q1シリーズ | 約55mA |
シグナルタワー | LE-202FBP-RY | 約25mA(色ごと) |
ブザー | – | 約40mA(突入250mA) |
オートスイッチ | D-M9B | 約2.5〜40mA |
ソレノイドバルブ | SY5000シリーズ | 約17mA |
上記の合計値を算出し、その70%程度を目安にAVR容量を設定すると、より安全で実用的です。
4. 過電流保護装置の選び方と実装ポイント
過電流保護装置は、短絡や異常電流から機器や配線を守るための重要な構成要素です。選定と実装における主なポイントは以下の通りです:
(1) AVR出力にサーキットプロテクタ(CP)を設置
推奨例:CP30-BA1P1-Fシリーズ(高速動作型)
(2) CP容量の目安:AVRの定格出力電流×70%
AVR定格電流の70%を目安とする。
理由:AVRの過電流保護機能が動作したとき、2次側には、定格電流の70%程度の平均電流が流れることが実験結果より明らかになった。
平均電流とは、出力端子がON-OFFを高速で繰り返しているときの出力電流を言う。(俗称)
(3) 配線サイズとの整合性を確保
例:0.3mm²の電線では、許容電流が約3Aであるため、それに見合ったCPを選定する必要があります。
5. 設計の現場で役立つ実用的アドバイス
・突入電流に注意:一部の装置(特にブザーやタワーライト)は、瞬時に大きな電流を必要とします。電源選定時には突入電流も含めて評価しましょう。
・並列接続での負荷分散:大容量AVRを使用する場合、小容量のCPを複数並列接続する設計も効果的です。
・現場での動作試験:設計値だけでなく、現場での実測や負荷試験も積極的に実施し、仕様通りに動作するか確認することが重要です。

6. まとめ|信頼性の高い設備設計を目指して
機械製造業向け設計において、電源と保護回路の適切な選定は、トラブルの未然防止と長期的な設備の安定稼働に直結します。AVRの負荷率設定、機器ごとの電流把握、過電流保護装置の適正配置といった基本を押さえることで、安全かつ効率的な設計が可能になります。今後の設備設計において、本ガイドが一助となれば幸いです。